地積測量図の作製
現在官公署から発注されている用地測量の多くは、その成果に基づいて地積測量図が作製されており、測量の目的が登記を前提にしたものが多数あります。
用地測量委託業務の大半は土地の分筆登記等に関する不動産の調査・測量であり、土地家屋調査士法第3条に定められた「調査士業務」となります。
不動産登記法施行細則第42条の4第4項が地積測量図には申請人のほか作製者が署名押印すべきものとされていますがその趣旨は、当該土地の現況を正確に登記簿の表題部に反映させる必要上、作製者に対し調査・測量の成果を正確に地積測量図に表示することを要請し、もって当該登記申請の真正さを担保とするとともにその結果に対する責任の所在を明確にするためと解されているので、地積測量図の作製者欄に署名捺印するべき者は、実際に現地を調査・測量し、その結果に基づいて地積測量図を作製した者でなければならないことになります。
そして押印者がその後の裁判上の責任を負うことになります。
測量士等が地積測量図を作製することは調査士法第68条(改正前第19条)に違反します。
法務局(登記所)に提出する書類、図面をつくるということは本人申請の場合を除いて土地家屋調査士の事務とされていますが、その事務を測量士等(土地家屋調査士の資格のない者)が業として受けるという場合には、調査士法第68条(改正前第19条)違反になり刑事罰の対象になる(調査士法第73条第1項)と考えられます。
このように依頼を受けて土地の登記に関する地積測量図を作製することができるのは土地家屋調査士以外にありません。この地積測量図は原則として法務局(登記所)に永久保存されます。
なお、当協会では地積測量図の作製に当たり、成果に基づくものであっても必ず現地調査を行うものとしております。
- 参考通達等
- 昭和61年9月29日付 法務省民三第7271号回答(法務省民事局長)
- 昭和61年9月29日付 法務省民三第7272号回答(法務省民事局第三課長)
- 昭和61年9月29日付 法務省民三第7271号回答(法務省民事局長)に関して 法務省民事局第三課 坂巻 豊氏の解説
- 昭和57年9月27日付 法務省民三第6010号回答(法務省民事局長)
- 照会
- 昭和61年8月25日付全公連発第26号
- 全国公共嘱託登記土地家屋調査士協会連絡協議会会長
- 地積測量図の作製者について(照会)
- 社団法人公共嘱託登記土地家屋調査士協会は、設立の目的を達成するため公共嘱託登記事件の適正な処理に努力しているところでありますが、一部の官公署等から第三者の調査、測量の成果にもとづいて地積測量図の作製を要請される場合があります。その場合地積測量図に記載すべき作製者については、下記のとおりと解しますがいささか疑義がありますので照会します。
- 記
- 不動産登記法施行細則第42条の4第4項が地積測量図には申請人のほか作製者が署名押印すべきものとしている趣旨は、その図面の正確性を担保とすることにあると解されるから、その図面に表示された土地について実際に調査・測量した者(官公署等の職員であると、私人であるとを問わない)が作製者として署名押印すべきである。
- 別紙甲号
- 照会
- 昭和61年9月1日付日調連発第104号
- 日本土地家屋調査士会連合会会長
- 地積測量図の作製者について(照会)
- 表記の件について、別紙のとおり全国公共嘱託登記土地家屋調査士協会連絡協議会会長から照会があった
ので、同協議会長の意見のとおり解して差し支えない旨回答したいと考えますが、いささか疑義がありますので照会します。
- 依命通知
- 昭和61年9月29日付法務省民三第7272号
- 法務省民事局第三課長
- 地積測量図の作製者について(依命通知)
- 表記の件について、別紙甲号のとおり照会があり、別紙乙号のとおり回答されたので参考までに通知します。
- 別紙乙号
- 回答
- 昭和61年9月29日付法務省民三第7271号
- 法務省民事局長
- 地積測量図の作製者について(回答)
- 本月1日付日調連発第104号をもって照会のあった標記の件については、貴見により回答して差し支えありま
せん。おって別紙民三第7272号のとおり各法務局長及び地方法務局長あて通知したので申し添えます。
- 解説
- 法務省民事局第三課 坂巻 豊
- 地積測量図の作製者について(依命通知)
- 土地の表示登記申請(不動産登記法第80条第2項)、土地の地積変更登記申請(同法第81条第2項)、土地の分筆登記申請(同法第81条の2第2項)等の申請書に添付することとされている地積測量図には、作製者が署名捺印することとされている(不動産登記法施行細則第42 条の4第4項)。
この趣旨は当該土地の物理的客観的な状況を正確に登記簿の表題部に反映させる必要上、作製者に対し、当該土地の調査・測量を正確に実施するとともにこの成果を正確に地積測量図に表示することを要請し、もって当該登記申請の真正を担保するとともにその結果に対する責任の所在を明確にするためと解されるので、地積測量図の作製者欄に著名捺印するべき者は、実際に現地を調査・測量し、その成果に基づいて地積測量図を作製した者でなければならないと回答されたものと考える。
なお本回答により、登記官の実地調査等により、登記申請書に添付されている地積測量図の作製者欄に当該土地を調査・測量した者以外の者が署名・捺印されていることが明らかとなった場合は、補正を命じ、この補正に応じない場合には、申請書に必要な図面の添付がないことと評価せざるをえないであろう。
- 照会
- 昭和57年6月22日付日調連総発第90号
- 日本土地家屋調査士会連合会会長
- 土地家屋調査士法第19条(現行第68条)該当事項について(お伺い)
- 測量士等が業として他人(官公署、個人を問わない)の依頼を受けて、不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査・測量をすること及び地積測量図等を作製することは、土地家屋調査士法第19条第1項本文(現行第68条)の規定に該当するものと解しますが、いささか疑義がありますので何分のご指導を賜りたくお伺いいたします。
- 回答
- 昭和57年9月27日付法務省民三第6010号
- 法務省民事局長
- 土地家屋調査士法第19条(現行第68条)該当事項について(回答)
- 本年6月22日付日調連総発第90号をもって照会のあった標記の件については、貴見のとおりと考えます。
- 質問
- 昭和60年4月19日第102回国会衆議院法務委員会
- 柴田睦夫委員
- 土地家屋調査士法第19条(現行第68条)該当事項について(要旨)
- この見解から見ますと、官公署と言えども、嘱託登記に際し登記所に提出すべき地積測量図などを測量業者が作製することは、その測量業者について、大体繰り返し行わせるでしょうから、法第19条(現行第68条)違反の疑義も生じてくる余地があるのじゃないかと思いまが、いかがでしょうか。
- 答弁
- 枇杷田泰助法務省民事局長
- 土地家屋調査士法第19条(現行第68条)該当事項について(要旨)
- 登記所に提出する事になるいろいろな書類でございますが、そういうものを作成する、図面をつくるというようなことは土地家屋調査士がやらなければならないわけでございます、本人申請の場合は除きますけれども。従いまして、そういう仕事を業として土地家屋調査士の資格のないものが受けるという場合には、ただいまお示しの調査士法の19条(現行第68条)違反になろうかと思います。